2020.12.10

日の短い冬に

ドストエフスキーの『白痴』は、何年か前に半分くらい読んで、そのまま静かに忘れていたのだが、最後まで読んでないことを、ふと思い出し、もう一度最初から読み直している。まだ序盤だが、意外と覚えている。確かに、このわけのわからなさ、最後までたどりつける感じがしない。

小学生たちがよくやっているブレイブボード? あれをどうしてもやりたくなって、子供たちのために、といって買ってみた。さあ、外で遊ぼう、といって子供たちを連れて外に行くのだが、彼らは地面を掘ったり(発掘ごっこ)するほうが楽しいらしく、実際、練習しているのは私で、2回転んでプロテクターの必要性を理解し、最近ようやく少し乗れるようになって、今とてもこれが楽しい。

クイーンズ・ギャンビットが面白すぎて、『ボビー・フィッシャーのチェス入門』を買う。

2020.11.23

見つかった、何が?

大人には何が面白いのかわからないようなことを、子供は面白がったり大笑いしたりする。大抵わけがわからないままだが、たまに、黙って成り行きを見守っていると、行き着く先で面白さに気づくこともある。

私がソファでぐったりしていると、9歳の娘がやってきて、楽しそうに言う。

「ねえ、同じ言葉を何度も使っていいっていう、しりとりをやるとね……」

「?(それって何の意味が……)」

「キツツキ、キツツキ、キツツキ、キツツキ、キツツキ、キツツキ、キツツキ、キツツキ、お、永遠を見つけた」

「!」

2020.10.29

サメは海にいる

砂浜にレジャーシートを敷く。先日、海に行った。子供たちは、海の果てや波打ち際などには興味を示さず、もっぱら視線は下を向き、小さな貝殻を集めたり、来る途中で拾ったドングリを砂の上に並べたりすることに夢中になっている。遠くまで見えるよく晴れた日だった。夜、5歳の息子はお風呂の中で海のことを思い出す。

「とうさん、今日行った海にはサメがいるの?」

「サメ? いないよ、たぶん」

「どうして? サメは海にいるんでしょ?」

「そりゃ、そうだろうけど……」

子供の素朴な問いに、余裕のない受け答えをしてしまうのは、いつものこと。でも、ふと思い返し反省する。何が気になったのか知らないが、確かに、サメは海にいる。

2020.9.6

歴史

———確かに、「すべてが過去からやって来た」と言われるのが常かもしれないが、しかしその「過去からやって来る」というフレーズの意味が問題なのである。世界には、まったく新しいことが存在することもある。つまり、「歴史は繰り返す」し「歴史は繰り返さない」

———私たちが歴史に関心を寄せるのは、未来は必然であり、未来は過去に縛られていると考えるからではない。人々が過去においてある種類の社会で生活したということは、将来において生み出す社会の種類を厳密あるいは絶対的に制限するわけではない。私たちが歴史を研究するのは、他の可能性を見つけるためであって、その可能性のなかで、いま人間の理性と自由は歴史を作ることができるのである。

C・ライト・ミルズ 伊奈正人/中村好孝 訳『社会学的想像力』

2020.8.13

時代

夕食後の片付けのとき、娘が話しかけてきた。

「とうさんは『時代』の名前をいくつ言える?」

「時代?(昭和、平成・・・)えーと、わかんない(適当)」

「わたしが知ってるのはね。カンブリア紀、シルル紀、白亜紀・・・」

2020.8.10

流動性(解放ではない自由)

「選択と購買」中心の生活を特徴づける、アイデンティティの流動性と柔軟性は、自由の再分配の手段にはなっても、解放の媒介にはならない。

(中略)

ソルボンヌ大学のイヴ・ミショーは、これについてつぎのようにのべている。「機会が多すぎると、破壊と、断片化と、脱線のおそれが拡大する」

ジークムント・バウマン 森田典正訳『リキッド・モダニティ』

2020.7.28

ポンポフとアンキポフ

子供たちは今、恐竜が大好きで、100円ショップで買った2体の恐竜のおもちゃをとても気に入っている。名前をつけて可愛がっている。ポンポフとアンキポフ。

物語が始まりそうな名前のとおり、「ポンポフは言った」『ダンスをするポフ』「アンキポフは言った」『何かが見つかると思って穴を掘ったポフ』とか何とか、毎日コントのような恐竜ごっこが大真面目に進行している。

2020.7.16

風・波・暗がり

目をあけて聞きつつゐたり暗黒を開く風の音遥かよりして

佐藤佐太郎

なぎはてて限りもしらぬ暗闇と思ひゐしときまた風が吹く

佐藤佐太郎

2020.6.28

海外ドラマ甘口レビュー2

星三つ「心動かされる」
星二つ「良い」
星一つ「もう少し」

title star review
ゴッドレス(Netflix) ★★★ リアリティがなくても、美しい自然と良い演技とセンスがあれば厚みのあるドラマが出来上がる。暗くスローな展開を経て、積もり積もった情念を最後に理屈もろとも吹き飛ばす。モダンで豪快な西部劇。
運命の7秒(Netflix) ★★★ 目指すところもなく漂うように、行きつ戻りつ、ゆっくりとした道のりであったとしても……実はすべてが収まるべきところに向かって進んでいるのだとしたら? それは少しの希望になるのかもしれない。
オザークへようこそ シーズン3(Netflix) ★★ 夫婦を描くドラマとして、とても見応えがある。一人だけ強過ぎる、って状況になってないところがいい。
ジェイコブを守るため(Apple TV+) ★★ 本当のことをめぐって家族の絆が試されるサスペンス。ぎりぎり欲張らず丁寧に描かれているが、でも最後は詰め込みすぎた。
イントゥ・ザ・ナイト シーズン1(Netflix) ★★ みんなで力を合わせて、ひとつになって、謎の危機的状況を乗り越えよう、といっても、人はそう簡単にわかりあえない。
ロシアン・ドール シーズン1(Netflix) 予測つかない展開が小気味よい。ループものだが切ない感じはあまりない。
レポーター・ガール (Apple TV+) 閉鎖的な小さな町を舞台にしたミステリーで、そろそろ面白くなるのかもって雰囲気はあったと思う最後まで。
監禁面接(Netflix) 怒りで自制心を失った50代の失業者(カントナ)が暴れまくるサスペンス活劇。