2020.6.22

完璧とは完璧でないと気づくまでの試み

夕食のとき、明日は幼稚園だよ、と伝えると、そこから息子の機嫌が悪くなった。すでに幼稚園は再開しているけれどまだ週に3日程度。登園日はだいたい嫌がっている。しかも明日から給食が再開する。それがさらに嫌だと言う。「給食があるの? それってすぐに帰れないってことでしょ」彼が何より嫌だというのは、家で遊ぶ時間が短くなること。

給食の献立を確認した妻が明るい声で言う「明日の給食、パイナップルだって」「でも行きたくないんだよ。行かないんだよ!」主張を曲げるつもりは絶対にないと断言を繰り返す。だが実際のところ彼は動揺していたのだ。夕食が終わって、お風呂の準備をしていると、彼が姉と一緒になってあれこれ作戦を練っているのが聞こえてきた。「給食だけ取りに行って家に持って帰って食べる!」または「給食の時間になったら幼稚園に行って、パイナップルを食べたらすぐに帰る!」

本を読んでいると(いつからだろう、子供たちが起きている時間でも、わずかな隙に、本を読む時間を作れるようになったのだ)何度か息子がやってきて完璧な作戦を聞かせてくれるのだが、最後は完璧でないことに気づいて走り去っていく。

そろそろ寝る時間という頃。息子が近くに寄ってきて、明日は朝から幼稚園に行って給食を食べたあとも最後までいることにしたよ、と言う。意外だったので、理由を聞いてみた。「だって、どうしようもないことだから」彼の口から「どうしようもない」という言葉を初めて聞いた。どこで覚えるのか、子供は思いもよらない言葉を発したりする。

2020.5.26

はじけるポップコーン

5歳息子は今年の春から幼稚園の年長組になったわけだが、休園が続き一度も年長さんとして登園していない。家の中で遊ぶのが大好きで、普段から幼稚園に行きたくないと言っている彼は特に困っている様子もなく、毎日遊べるだけ遊んで気ままに過ごしている。

ミニカーやプラレールを激しくグルグル動かし、猛烈な勢いで「はじけるポップコーン!」と繰り返し叫ぶ。無限にループする。「はじけるポップコーン!」歌なのか何なのか、わからない。

娘は今年の春から3年生で、週に一度、分散登校。学校にいるのは15分くらい。持ち帰ってきた課題やプリントに黙々と取り組む。弟が猛烈に叫び遊ぶ、そのすぐ横で、コツコツと取り組む。でも「はじけるポップコーン!」絶叫ループには彼女も笑いだす。

寝るとき布団の中で息子に、「あの、はじけるポップコーンって何?」って聞いてみた。大笑いしながら転がって、興奮気味に説明してくれたが、よくわからなかった。

2020.5.22

進む(わからないまま)

生き残るということは、詩を書くことに少し似ている。詩人でさえも、詩がどのように終わるのか、終わってみるまでわからないのである。

イワン・クラステフ 庄司克宏監訳『アフター・ヨーロッパ』
2020.3.7

改めて思う幾つかのこと

先日リビングの椅子に座っていたところ、8歳娘がふざけて寄りかかってきた。ミシッと音がして椅子が壊れた。床に転がり天井が見えた。コントみたいに壊れた。二人とも怪我なく無事で良かった。

子供と大人では時間の経過する感覚が違う。毎日一緒に過ごしているのに不思議だと思う。

TRUE DETECTIVEのシーズン2に心動かされた。レビューの評価があまり良くなかったので期待していなかったが、シーズン1よりも良いと思った。人が何を良いと感じるかなんて分からないものだと思う。

2020.3.2

反芻

数日前、台所に貼ってあった。妻が書いたメモ。

空気を入れる(イオンバイクで)

サドルを下げる(ペンチで?)

2020.2.2

海外ドラマ甘口レビュー

星三つ「心動かされる」
星二つ「良い」
星一つ「もう少し」

title star review
ザ・モーニングショー (Apple TV+) ★★★ ビリー・クラダップが歌うシーンに感動。
オリーヴ・キタリッジ(prime video) ★★★ 世の中、だいたい人って皆、変わっている。日常は続いていく、ざわざわする感じと。
ジェネレーション・キル(prime video) ★★★ 別世界の出来事のようだが、同じ時代を生きている。想像すらしなかったこと色々と。
トワイス・アポン・ア・タイム(Netflix) ★★ ドイツドラマのDarkが、ああいうふうなら、フランスだったら、こんなふう。箱。軽いんだか難解なんだか。
ビッグ・リトル・ライズ シーズン1(prime video) ★★ 映像、音楽、アクター、素晴らしいオープニング。ストーリーは何ともないけど……鮮やかなマジック。
The OA シーズン1(Netflix) ★★ 内容を全く知らずに観たら、驚愕展開の第1話。その後は、あれ?って調子だったが、最終話でまた強烈。最初と最後が凄いドラマ。
Veep シーズン1(prime video) ★★ 副大統領とその仲間たち(手下たち?)によるドタバタな毎日を描く当世風喜劇。
メシア(Netflix) FBIの人、もう少し頑張ってほしかった。
13の理由 シーズン1(Netflix) カセットテープ、一気に聞いてほしかった。
GIRLS シーズン1(prime video) アダム・ドライバーのインパクトで、その他よくわからず。
2020.1.23

過去に未来が未来に過去が

現代社会の逆説の一つ。それは、変革への渇望が過去への深い郷愁と結びついていることである。

A.D.スミス 巣山靖司・高城和義他訳『ネイションとエスニシティ』
2020.1.11

立ち止まり、受け入れよ

子供と過ごしていると、自分は誰かに試されているのではないかと思うときがある。

例えば、怒りの衝動に駆られたとき。もちろん、そういうことをすれば人は怒り出すんだよ、ということを分かってもらうためにも、ストレートに怒りを表に出す方が良いときもある、もちろん。

だが、ぐっと怒るのを堪えたほうが良いときもある。特に子供が感情的に取り乱しているようなとき、大人が怒り出すと、状況はさらに悪化したりする。

5歳の息子の癇癪。まるでこの世の終わりかのような絶望を全身で表現し、嫌だと絶叫する。論理を超越したような理屈を主張して泣き喚く。おもちゃを片付けよう。お風呂に入ろう。出かける時間だよ。ご飯の時間だよ。寝る時間だよ。きっかけは些細なこと。その瞬間、爆発する。その小さな体から発する満身の怒り、嘆き、罵り。

機嫌の良いときの息子。地上のありとあらゆる至福を詰め込んだかのような笑顔と可愛らしい声。夢中で何が好きかを語り、笑い、歌う。そう、機嫌さえ良ければ。繰り返す。機嫌さえ良ければ。

大人は、絶え間ない日々の疲労や焦りを言い訳に、常にゴールを一直線に目指したいものだし、余計なことは何もしたくないし、もう無意識のうちに考えることすらしたくなかったりもする。そんな大人にとって、子供の癇癪は驚くべき理不尽であり、新たな感情の破裂の導火線にもなる。なぜ? 今? なぜ!

大人が、もしここで大声を出したり、相手を怯えさせるような威嚇や脅しをすれば、ひとまず目的を果たすことができるのかもしれない。いや、もう、そうしてしまいたい衝動が抑えきれなくなっているのではないか……いやいや、待て。落ち着ついて。ここで感情的になって対抗したとして、本当に目指すところに辿り着けるのだろうか。でたらめな力と力の衝突は、でたらめな場所に飛ばされてしまうだけではないだろうか。

育児書やアンガーマネジメントなどでよく見かけるかもしれない。相手に何かを伝えたいとき、まず相手の気持ちに「共感」することが大切だ、とかなんとか。だが、これは簡単そうで難しい。相当難しいと思う。まず、自分の中にわき起こる苛立ちや焦りを克服しなければならない。そして、ただの我がままにも見える相手の感情に対し、さらに辛抱強く距離を詰め、共感を示さなければならないのだから。

そんな陳腐な、と思うなかれ。最善かどうか、分からない。だが、それによって開ける道があると思う。癇癪を起こす子供に対し、怒り出したい気持ちを抑え、落ち着いて、ゆっくりと優しい声で、相手の気持ちに寄り添ってみるということ。それは余計に時間のかかることかもしれないし、そもそも時間に余裕のない場面だったりもする。それでも、試す価値はある。思い通りにならないことを受け入れるのは子供だけではない。まず大人が現実を受け入れる必要があるのだ。今あるこの現実に、立ち止まり、受け入れよ。

それでも子供は簡単には落ち着かない。子供だって分かっている。そうきたか、と。その手には乗らないぞ、と。なかなか距離は縮まらないかもしれない。だが、人の気持ちには波がある。ほんのちょっとした、なんだか分からない何かで、風向きの変わるチャンスが訪れることもある。少しでも歩み寄って、一緒に現実を受け入れるのだ。……とかなんとかいってみたが、そんなふうにうまくいくとは限らない。だが、それでも良いのだ。何かを諦めれば、別の何かが見えてくる。お互いに思っていた結果とは違うかもしれない。でも、でたらめな場所に飛ばされるよりは、いい。